【アニーさんと朝のお経】

宿坊に泊まると自由参加で朝のお勤めというのに参加できるのである。
※お経を和尚さんと一緒に上げたり雑談をして頂いたりする朝の勤行である。

本堂が開門されるまで外で列を作って待つ我々。

ツアーの人たちも参加する様子。
そりゃそうか。

と列で待っていると昨日の中国人夫婦、そしてアニーさんが登場し軽やかに雑談をしつつ待つ。

外国人の方は参拝のときにお経を上げない人が多いので、まさかアニーさんが参加するとは思っていなかった。

そして本堂へ行って、アニーさんの隣りに座りいざスタート。

ご住職のお経が流暢すぎてどこを読んでいるのかあまりわからない…。
こりゃアニーさんもわからんだろう。
と隣を見たら

「むじょう~じんじん~みみょうほう~」

えっ?あなた何者!?

アニーさんは英語にローマふりがなが入っているガイドブックで朗読していた。
いや、それでこの音読を解読できるって凄いぞ!

おそらく彼女はクレバーなのだ。

そして合間に

チャカチャカチャン!
シャリンシャリン!

と軽快に和尚がシンバルを鳴らすお経にノリノリな私である。

このハイハットクローズ音がその昔のグーニーズの主題歌の途中を思い出させる。

YAa!YAAA!!

そして何事もなく朝のお勤めも終わり、部屋へ戻るがてらアニーさんと雑談する。

私「通し打ちしてるの?」

ア「観光で3週間いるから2週間はお遍路す
  るの!」

私「そうなんだいいね~!明日迎えるであろう最難関の焼山寺はどうするの?」

※焼山寺とはお遍路の最難関にして一番最初に迎えるハードな道のりと言われている。「お遍路転がし」と呼ばれるキッツい坂があるのですが、それが6つもあるという難所。
「1に焼山、2にお鶴、3に太龍」
焼山寺 鶴林寺 太龍寺の意味です。
と呼ばれる難所の一つです。

私の焼山寺編をご参考に。

ア「多分~焼山寺はバスで迂回していくよ~だってもう肉刺がすでにたくさんできてる」

私「うん、それがいいと思う!体壊してまでやることじゃないもんね!」

そんな雑談を経て各々が旅路へと向かうのであった。

道すがらホバリング豚にビビりながらも平和に順調に進んでいく。

途中アニーさんに出会い次のお寺まで一緒に歩く事に。

ア「何でお遍路に来たの~?」

私「かくかくしかじかで節目みたいなもん」

ア「いいねいいね~」

私「アニーさんは何でお遍路?」

ア「去年のクリスマスにお母さんが死んじゃ
  って…。お母さんがブディストだったの
  よね。前の旦那もブディストだったし。
  そして歩いていれば何かが見つかるのか
  なって思ってさ。」

急に重いかよぅ!

聞かれたから聞いてもいいかなって思ったら急に重かったのでカウンセラーモードで話を続けた。
がすぐに話題は切り替わった。

どうやら前はニューヨークに住んでいたそうだがイヤになって山に引っ越したのだそうだ。

私と似ていてその辺は他愛も無く盛り上がった話題だった。

そしてアニーさんはスピードが速いので次の寺の階段333段の前で先に行ってもらった。

そして私もなんとかそこをお参りし、階段を下った時に思った。

もうビッコを引きながらでしか歩けない私がそこにはいたのだが…

(心の声)

これはまだまだお遍路用の足ができてないからじゃないか?
みなさん言ってる通り、数日すればそれ用の身体ができてくるって言うしな。
私の気のせいだよな、うん。
まさか靴があってないなんてことはありえないよな。だってSALOMONで良い靴だしな。
しかし都内で歩いてても、一般的な人より歩くのが速い私だし歩くのも好きなはずなんだが…

何かおかしいけど…まあきっと気のせいだ…。

※この後の記事でも解説が入りますが、完全に靴があっていませんでした。気のせいだなんだと自分を誤魔化そうと希望的観測に溺れないように気をつけてください!

ズキズキ!ズキズキッ!

痛む足を引きずりながら10番の切幡寺まで回り終える。(足が痛すぎて写真をほとんど撮ってません…)

私のプランは本日最後の11番藤井寺の途中のビジネスホテルへ荷物を置いて参る予定だった。
なのでホテルへ向かうが、まあまあ長いのでR…
三時間ほどの道のりをテクテク歩く。

やたら綺麗なリザードマンが応援してくれる。
(歩いているとやたらリザードマンに遭遇する。)

【幼女の気持ち】

※ここからは善意ある非常に優しいおじさんの物語になるのだが、それがわかる前はドキドキしたという話で決しておじさんを悪く言いたい訳ではないことをご了承ください。

お~~~~~い

JAを通り過ぎようとしたら軽トラのおじさんに声をかけられる。

お「そ、そ、そ、そこまっすぐ行くと何々川があって、そ、そ、そ、そ、その先の山が何々山があってそこの隣が何々川でそこにある、は、は、は、は、橋が何々で…!!!」

早速ものすごい

情報過多

私「へ~そうなんですか~!」

お「この地図あげるからよう!ほ、ほ、ほれ!」

一所懸命に説明してくれるおじさんに感謝を感じながら、それでも今の私の足だとそろそろ行かないと日が暮れてしまう…。

私「色々とありがとうございます!頑張りますね~」

と立ち去ろうとした私 が…

お「そ、そ、そ、そうだ!遠いよ!と、と、と、遠いから乗ってけ!」

あなたが神か!?

お接待(Wikiのお接待項目参照)は断らない事をモットーにしている私は
足が激痛なのもあってホイホイと軽トラに乗せてもらう選択肢を選んだ。

そして私を乗せてトラックは走り出す。

ちょっとドモリ癖のあるおじさんだが善意でやってくれてるんだろうとのんきに構えていた。

そのままホテルへまっしぐらに進んでもらえると勝手に思い込んでいた私だったのだが…

川の土手の細長い高台になっている道へ侵入していき、
徐々に草の背が高く周りが見えない感じのところへさしかかる。

おっ、どこへ向かってるんだろうか?
話ではここは道の途中なんだろうな~

↓この草がもっと背が高くなったよな視界が狭い場所

この草がもっと背が高くなったような場所


そして車が停まった…。

ギィッ!

サイドブレーキ!っだとっ!?

そして私の方に肩ごと向き直るおじさん。

「あそこの山は… あそこの山は… この川は… あそこの高校は… 甲子園で云々…」

だんだんと話に熱が入ってくる。

私は持ち前の会話能力を全開にすると同時に心理分析を始めた。
私は何かの恐怖を感じていたのだろう…。

(あれ?!このままこの草で目隠しされた状態でまさか悪戯されたら…!?)

(幼女がついていって悪戯されるときってこんな感じなのか!?)

普段はそんなこと考えないが雰囲気とロケーションがあいまって不安になる。

(心理分析の声)

ピコピコピコピコ…分析中…分析中…

きっとご自分もお遍路に興味があり、地元を歩いた事もあると言っていたからツアコンのようにお遍路ガイドをすることが楽しみであり、かつそういった願望があるんだろうな。話に白熱してこうなってるんだろうな。私のカウンセラーチックな話し方がきっと作用している可能性もあるな。ちょっとどもり癖のある方だからそれも相まってるだけだよな。よし、きっとそうだ!しかし異様に近いな…。体が近づいて…

キレ散らかすことも簡単だし暴力的な修羅場や怖い人関係なんかはもっとずっと経験があるが、
お遍路中にそんなこと絶対したくないし私の思い込みの可能性だって大いにあるわけだし
一旦落ち着けよ私…。

ピコン!分析完了!

とりあえず金剛杖を彼の方に向け、笠を少し突き出すような形にして話を聞く。

笠と杖に体がぶつかる。

あまり覚えていないがすべての話を膨らませて川を渡った先のホテル側の景色も早く見てみたいですね~
というような事を言った気がする。

そして無事に私の宿泊予定の
アクセス鴨島さんへ近づく。



お「こ、こ、これが今日の宿泊先やね、ほんでまたあとでUターンして戻ってくるけど、え、え、駅側はね!」

ブイーン!と道を

曲がった~!!

サヨナラー!!
私のアクセス鴨島~!涙

私「本当に色々ありがとうございます!
せっかくなんで駅前から歩きたいので駅で降ろして頂けると嬉しいです!」

お「お、お、お、ー!そ、そ、うかそうかー!」

と駅前で名前の交換をして無事に別れた。

ここで何が言いたいかと言えば

人を信じる心。そして純粋性。
疑わない心。感謝する心。
これらを学んだ出来事だった。

疑ってゴメンよおじさん

が、同時に

女性お遍路さん、力の無い優しい男性にとっては恐怖がこういう風にやってくるのだという事実ベースの出来事でもあると言うこと。

自分を戒めると共に事実ベース、呑気すぎてもいかんと言うことを心に刻んだ私は、
今後出会う人にはそれなりの体癖論や心理分析を当てながら進むことを決めた。

【イムジン川】

そしてようやく着いたはアクセス鴨島さん

恋しかったよぉ~

それと同時に私の足はもう悲鳴どころか歩けるのか?というぐらいに痛んでいた。

しかし時間もまだある。

まずは荷物だけでも置かせてもらわなければ…。

呼び鈴を鳴らすと若いお兄ちゃんが出現

私「時間早いんですが、荷物だけでも置かせてもらえませんか…?」

兄「部屋ができてればもう入ってもらっていいですよ~!」

あなたが神か!!!

運良くチェックインをさせて頂いた。
めちゃくちゃ助かるのである神対応のお兄ちゃん!

そんなこんなで荷物を置いて、痛んだ足を引きずりながら焼山寺の登山口にあたる11番藤井寺までなんとか歩いて参拝を終わらせる。

そこにはバスツアーのお客さんたちが大勢いた。話している言葉は韓国語っぽかった。

そして、私が参拝してお経を上げていると後ろから合唱が聞こえてきた。

イムジン川~水きよく~

っ!?

イムジン川のような旋律に乗せた違う宗教の歌をみなで合唱している。

私にはイムジン川にしか聞こえなかった。

私の背中に浴びせられる合唱は、謎に私が崇められてるかのような錯覚を起こさせる。

怖エーよ!退散!

そそくさと逃げる私…

別に他の宗教をどうこうは思わないが、仏教の寺に来て自分たちの宗派の歌を歌うということは疑問符ではあった…。

あの歌の主旋律は良い感じだったな~

そしてなんとか宿に帰り着いた私。

近場に薬局があったのはコレ幸い。
湿布を買いまくり、小量のお酒で麻痺させることを試みた。

痛すぎて話にならないのだが、明日は例の焼山寺。一番の難所をこんな足で乗り切れるのか…。

不安だけが押し寄せ、それを誤魔化すように自分を言い聞かせるのだった。

こうしてなんとか2日目も終えるのであった…。

おやすみ… 世界…

2日目 Fin.

“幼女になった私の巻” に1件のフィードバックがあります

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です