【不安の朝】

起きてもやはり足は不安だった。

不安いっぱいで朝日を眺め黄昏れつつ…

焼山寺の登山口である藤井寺まで歩いて30分ほど。
今の私の足だと45分ほどかかるだろうと早起きして5時半には出発。

本来は一番人気の吉野旅館さんに泊まるのがベストとされている。
近いし、かつ荷物を次の宿泊先まで送ってくれるという素晴らしさ。
だが私は予約が取れなかったため、荷物を背負っての登山となる。
参拝道具も入れて約10kg

そして藤井寺に到着し水を飲みご飯を食べる。

他のブログで色々と解説されてるので割愛するが、水は途中でgetできないため1Lを持参。
(季節にもよる。)

不安ながら進むしかないと登山入り口へ入ると、さらに不安をあおる看板が…。

な、長い~~~

今の私は間違いなく弱足以下である。。

健脚という言葉には違和感を感じていたのだが、そして後ほどわかってくるのだが、
どうやら「健脚」とは何キロであろうと自分の荷物を背負い、一日を通して
急いで歩いているビジネスマンと同じスピードで歩ける事を言うっぽいのである。(約時速4.5km)

と、さて

登山開始!

【スーパーおばば登場】

そして1時間ほど経ったところで現れる休憩所で思わず休憩を挟もうとテーブルの所へ行くと女性おばちゃんの姿が…

軽く挨拶をしてリュックを下ろして休もうとしたら

おば「あんた休憩したらアカンで!」

私「えっ?そうですか?えへへへ」

笑って誤魔化して休憩しようとしたところ

おば「ほんまやて!
   それで動けんようになる人ぎょうさん
   見てきたわ!」

あっ、本気で言ってくれてるこの人…

私「そ、そうですね…では…」

おばちゃんが先に行く形で私も後を追う。

あれ?休憩を奪われたかしら…?(汗)

とも思ったがなぜか素直に言うことを聞いた。これが後に思えばよかったと思う。

おば「辛くてもほんのちょっとずつでも歩く
   んや!ちょびっとずつでも!ちょこち
   ょこちょこちょこでええんや!やない
   と体動かんようになる!」

おば「一歩進んだら一歩近づく!」

おば「あんたまだ20代やろー!?なっ!」

私「よんじゅう~いち~~!!」叫ぶ

おば「わっはっはっはーーー!!爆笑」

何笑ろてんねん!笑

おば「けっこー行ってるな!見えへん!」

おば「私なんて72歳よ、みんなそんなに歩
   けん言うわ~!」

スーパーおばば参上!

そしてあっという間のスピードで闇の中に消えていった。

後から思うと、おばばの教訓があったから登頂できたのだと思う。

ありがとう!おばば!

そしてしばらく進んだ先でも引き返してくるおばばに再会。

おばば「私もうこの先の庵まで行って引き返
    すとこや!」

すげー早い!

間近で見ると肌もツヤツヤ
72歳には見えない若さ。
なんだかわからないけどときめいてキスしたいかな、とか思った矢先

おばば「あんた思ったより早かったな!」

なぜだかこの言葉に救われた私がいた。

おばば「ほな気をつけて行くんやで~」

と颯爽とまた闇に消えていった。

改めて

ありがとう!おばば!
勇気をもらった!!

細かく書くと膨大な量になって長くなるので割愛する。

※必死すぎて必要な箇所の写真がないのでR

もはや脳内はどうにか乗り切るしかないとトランス状態。
痛みは後に麻痺してきて必死となる。
途中は「6つの遍路転がし」があってヒーヒー言ったり、景色が綺麗な場所を通ったり、
BIG弘法大師様に出会ったり、ロープの張ってある岩を登ったりとハードさは一入だった。
だが特に足が痛く感じなければ私には辛いは辛いけどそんなに苦ではなかった。
そう… 登り切るまでは…。

【四宮さん登場】

途中で出会ったちょいと調子の良い感じの四宮さん(仮名)とバッタリ会って、
そこから励まされ登る感じとなった。

それなりに強めの宮城県訛りでテンポよく話す四宮さん。
そして歩くのは今の私よりずっと早い。

彼は区切り打ちしかしていないらしく、焼山寺はもう4回目だという。

焼山寺は登って、下って、また登って頂上に着くという感じなのだ。

速度に付いてはいけないので先に行ってもらったが、途中で私を心配してくれたのか
一度下山するときは併せて側にいてくれた。

そして色々とこの先の道や小ネタを解説してくれる。

ありがとう四宮さん!!

そしてなんとか登り切ることに成功。

もはやアスファルトの道だと足が激痛に襲われる。
山道(土)のほうが足には負荷が少ないのでR。

※後にわかることだが、私の靴が合ってなさ過ぎること、リュックが合ってなさ過ぎる事によって負荷が思い切り足の裏とそれをかばう膝へモロにかかっていたっぽいのだ…。

登り切ったあとも本堂までの道はそこそこあるのだが四宮さんの豆知識に助けられた。

四「今から見えるですね、仏様がいらっしゃ
  います。その仏様が笑っているように見
  えたら貴方は善人。怒ってるように見え
  たら罪深き人なんですよ~」

私「心当たりがありすぎて怖い…」

↓右側の像です。正面から撮る勇気は…

すると…

笑った!笑ったよっ!?

そう。

何を隠そう私は善人だったのでR…。

四「おめでと~!貴方は善人です!」

とこんなパチンコ屋の放送のような、
一昔前のピンサロのような四宮アナウンスを聞きながら本堂へ向かうのであった。

そして、最後の心をへし折ろうとしてくる階段もなんとか登り切り…

到着!

と同時に気が抜けて足が…足が…

ドカーン!!

もう歩くのも困難なのでしばし座ってみる。

うん。これ回復しないね。

なんとかお参りを終わらせよう…。

参拝を終わらせてひたすら休んでいると思い出す。

あっ!ここから宿までも大分ハードだった!

そう、下山&宿までの道のりがあるのだ。

四「あとはずっと下るだけだからさ~」

私「ほ、本当でしょうね…?」

四「大丈夫だいじょうぶ~!」

信じるぞ四宮さん!

実は、私の頭の中ではもう決めていた。

宿や地元の人に迷惑をかけるぐらいなら、大きな道路へ出たらタクシーを呼んで宿までいこう。
そしてまた次の日に歩き直そう!と。

【一難去ってまた一難儀】

そして下山に向かうのであった。

が…

普通に山道!山の中!
そして暗くなってきたよ!これ大丈夫かしら!?

なんだよこのメガネは!?

ゴミを捨てるな!!

でもスイマセン…

私も拾って持ち帰って処分するほどの心の余裕がありませんでした…。

スイマセン…。

そして長い…

長いし辛い…

道路には出ない…

四宮の嘘つきぃ~!!

そしてなんとかこうとか道路に出たが…

アスファルトに足は限界だった。

タクシーを呼ぼう、もう呼んじゃおう!

スマホを取り出す。

バッテリー残0

終わった…

なんとか歩くよ…

歩くけど…

歩けない…

けど…

もはや金剛杖に頼り切り、漫画に出てくるような杖にすがりついた状態で歩行を進める。

もはや右足も限界なら、かばってる左膝が逆張膝になってしまって痛みが出てきている。

この日も下山から近場の宿は取れずで、上山温泉さんというところまで歩かなければいけないプランを組んでいた。

なんとかこうとか大通りまで出る。

あと1kmが死ぬほど長い…。

もはや意識もおぼろげで辿り着く。

予定より3時間遅れての到着だった…。
※もちろん事前に遅れる電話はしている。

【癒やしの島さん】

なんとか着替え温泉につかり、ご飯前に喫煙所へ立ち寄った。
正直、ここまでの記憶はあまりない…。

そして喫煙所にいた品の良さそうなおやっさんに話しかける。
仮に島さんとしよう。

私「ちょっと通し打ち歩きでお遍路やってまして…てへぺろ…」

島「私も~ てへぺろ」

よくよく話を聞いてみると、お遍路は4回目で今回はバスと電車を使っての通し打ちだと言う。

私は嬉しくなって事情を話してみた。

島「体壊してまでするもんじゃないよ~
  早く回るとかもどうでもいいよ。しっか   
  り自分のお遍路を歩みなさいな~」

ああ…

あなたが菩薩か!

私は雰囲気でなんとなく私が好きだなと思う人は同じく経営者という事が多いのだが、
島さんも経営者でパン屋さんを30年やってきたそうで、
ようやくリタイアをしたのでまたお遍路を自由に回ってるのだという。

優しい雰囲気を全開に醸しだし、しかし昔はやんちゃもしてたんだろうなという島さんに癒やされまくってしまった。

ありがとう島さん!

とても連絡先を交換したかったのだが、私はこのときもまだ「お遍路は一期一会」だから連絡先はあまり聞いちゃいけない。と勝手に思っていた。

交換しておけばよかったな…と今でも思う。

少し元気になった私は開き直って夕飯をとっても楽しみながら決意を決めた。

明日は徳島駅についたら絶対

靴を買おう!

そう心に誓った夜だったので R。

3日目 Fin.

“難所でほうほうのていの巻” に1件のフィードバックがあります

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です